― トラブルシュートでシステムを正常化した具体例を教えてください。
ある大手通信会社のシステムが動かなくなり、「このままでは、膨大なユーザーに迷惑をかけることになる」というトラブルがありました。そのシステムを開発している元請け会社からの依頼を受けて現場に出向くと、殺気立っていましたね。元請け会社のエンジニアが、通信会社の担当者から、「どうなっているんだ!」と叱責されているんです。元請け会社としては、「明日までに復旧させます」と、根拠もなく言ってしまった。通信会社側からすれば「プロがそう請け合っているんだから」と。でも、翌日になってもなにも進展していない。当然、怒りますよね。
元請け会社のエンジニアの表情からは、「クライアントさんのお怒りの矢面に立つのが私の仕事」という、あきらめに似たものが感じられました。私はそのとき、元請け会社側のスタッフとして末席にいたんですが、手を挙げて発言させてもらいました。手近のホワイトボードを使って、「いまの現状はこうです。原因になっている可能性があるのは、こことこことここ。確かめるためには、こういうテストが必要。テストをやるために、通信会社さんにこういうことをしてもらいたいのですが」といった説明をしました。
― 「えらそうに、顧客に向かって指示するのか」と、通信会社の担当者の怒りの火に油を注ぐだけなのでは…。
いいえ。パッと現場の空気が変わり、通信会社の担当者の表情が柔らかくなりました。「そういう話を聞きたかったんだよ」と。通信会社側からすれば、プロの的確な説明がほしいのに、なにも説明がないから怒っているんです。説明があれば、冷静になってもらえる。そういった意味では、技術力でシステムを正常化するのはもちろん、人の気持ちのマネジメントも、私たちの仕事のひとつです。結局、テストの結果、不具合の原因が見つかり、ユーザーへ被害がおよぶことは回避できました。
― 現場にさっそうとあらわれてトラブルの原因を見抜き、解決する。トラブルのせいで、もつれてしまった人間関係も正常化して、ハッピーエンドに導く。まるで名探偵が登場する映画のようです。
それは少しカッコよすぎるかな(笑)。でも、確かに僕らが現場へ行くと、「やっと来てくれましたか!」「待っていました!」という声がかかることも。複数回、トラブル現場で顔をあわせているエンジニアの方から「また瞬殺してくれるんですよね」と言われたこともあります。「また、しょうもないバグですか」と皮肉を返したんですけど(笑)。
― 名探偵に頼らざるを得ないのがくやしいけど、解決を期待している警部さんとの会話のようですね(笑)。
期待はヒシヒシと感じます。私たちはプロとして、その期待を裏切るわけにはいきません。私たちは困っている人を決して見捨てないし、どんなトラブルからも逃げない。解決するまであきらめません。それがトラブルシュートに携わる者としての責任であり、矜持です。私は前職のときからトラブルシュートに携わっていますが、これまで600件以上の案件を手がけ、いちどたりとも「解決できなかった」というトラブルはないんです。
― すばらしい実績ですね。では、山﨑さんがトラブルシュートの分野で第一人者になるまでの経緯を教えてください。
コンピュータとのかかわりは、小学生時代にさかのぼります。ファミコンのゲームが好きで、しだいに自分でプログラミングし、ゲームをつくるようになっていったんです。高校のときに「これからはコンピュータの時代。就職にも有利だよ」と言って、親に高額なパソコンをねだったりもしていました(笑)。
でも、当時はコンピュータに関する仕事をしようとは思っていなくて、大学・大学院では化学を専攻。とはいうものの、やはりコンピュータっておもしろいなと。化学実験をコンピュータで制御するプログラムをつくり、データの収集やレポートが自動でできるシステムをつくって、仲間たちが実験室にこもっている間、ずっとカフェでゲームしているとか(笑)。それで卒業後は、システム開発の会社に入社しました。
― 最初はシステムをつくるほうの仕事をしていたんですよね。
ええ。ある大手企業に、システム開発のプロジェクトメンバーとして常駐していたんです。でも、自分の担当する案件だけに携わっていても、おもしろくない。聞き耳を立てて、「この前、完成したシステムだけど。思った通りの性能が出ないんだよ」といった会話があったら、その輪の中に入っていって、「ここが原因ですね。こうすればよくなりますよ」と。すると自然に「あいつに相談するとトラブルを解決してくれる」という評判がたって。いろんな人から「実はみてもらいたいシステムがあるんだけど」と、トラブルシュートの相談を受けるようになりました。
― すごい積極性ですね。たいていのエンジニアは自分の担当案件だけで手いっぱいで、山﨑さんのように「ほかの案件に自分から首を突っ込む」なんてしないと思います。
そうかもしれません。でも私の場合、トラブルを解決すると、とても感謝されますし、頼りにされます。それがただただ、うれしかったんです。「これを自分の仕事としたい」と思い、勤務先の会社に対して「トラブルシュートの専門部署をつくりましょう」と提案。採用され、私がリーダーを務めることになりました。
顧客からも喜ばれ、スタッフもやりがいのある仕事に取り組める。この仕事を通じて、もっとたくさんの「困りごと」を解決したい。そして、トラブルシュートという仕事を大勢の人に知ってもらいたいし、スタッフにも、トラブルシュートという仕事に誇りと働き甲斐を感じてほしかった。そのためには、本人のモチベーション、エキスパートとしての高い技術を磨ける環境、そして成果に見合う報酬、すべてをバランスよく高めていかなければならない。そういう想いがしだいに高まり、仲間とともにAiritechを設立したんです。
プロフィール
- お名前山﨑 政憲
- お名前(ふりがな)やまさき まさのり
- 出身高知県
- 身長162cm
- 体重78kg
- 血液型A型
- 平均睡眠時間6時間
- 平均起床時間午前7時
- 趣味読書(漫画)、ビデオゲーム
- おススメ本資本論
- 今までに訪れた国3ヵ国
- 尊敬する人たくさん居すぎて絞り込めません
- 尊敬する経営者尊敬に値する経営者はいません
- 好きな作家星 新一、小松 左京
- 好きな映画猿の惑星(1960年代の方)
- 好きなミュージシャン小倉久佳、古川元亮、細江慎治
- 思い出に残るプレゼント高校時、親に買ってもらったPC
- いま欲しいプレゼント欲しいものは自分で手にいれます
- 過去に戻れるならいつ?小学生からプログラミング再勉強
- 好きな漢字一文字信