伊那食品工業株式会社 代表取締役会長 塚越 寛
人々から「いい会社だね」と認められれば永続企業になれます
東を赤石山脈、西は木曽山脈の峻峰に挟まれた南信州・伊那谷。天竜川沿いを南北に細く伸びるこの地に、トヨタ自動車や帝人など、日本を代表するグローバルカンパニーの経営幹部たちが足しげく視察に通う企業がある。国内No.1の寒天メーカー、伊那食品工業だ。同社は「会社の存在意義は人々の幸せの追求にある」との理念に基づいた経営を実践し、48期連続増収増益という超長期成長を実現させた。なぜ景気変動や市場の変化などを乗り越え、成長し続けられるのか。継続成長の秘訣や危機を突破してきた原動力などを同社会長の塚越氏に聞いた。
― 御社は1958年の設立から48期連続で増収増益を計上しました。驚異的な継続成長の秘訣を教えてください。
売上や利益といった数字を追求せず、「いい会社をつくりたい」という一点を目標にしてきたことです。
人々が日常会話のなかで「いい会社だね」と言ってくれるような会社になりたいと私たちは願っています。社是である「いい会社をつくりましょう」という言葉には、そんな想いをこめています。売上や利益は後からついてくるんです。
― どういう会社が「いい会社」なんですか。
社員や取引先、お客さま、地域の人々など、当社にかかわる人たちみんなを幸せにする会社です。
たとえば、お客さまに喜んでもらえる商品やサービスを研究開発し続けるのはもちろん、仕入先を買い叩かず、下請け会社とも対等の立場で接する。郷土愛をもち続け、地域の発展に役立つお金を出し惜しみしない。社員の給与を年ごとに増やすのも大切な要素です。当社は創業時からこれらを実践してきました。
― 利益を削って相当なコストをかけなければ、いい会社になれそうもありませんね。
誤解されがちですが、いい会社というのは、利益を残さず、後先考えずにばらまく会社ではありません。私が敬愛する二宮尊徳は「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」という箴言を残しています。どんなに立派な道徳や理想を語っても、肝心の経済がしっかりしていなければ長続きしません。問われているのは「なんのために会社は存在しているのか」ということです。
私は会社の役目とは、人々を幸福にすることだと考えています。それはきれいごとや建前ではありません。なぜなら、人々の幸せを追求するいい会社には、かならず経営にプラスの影響があるからです。
プロフィール
- お名前塚越 寛
- お名前(ふりがな)つかこし ひろし