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ニッポンの社長 > インタビュー > 編集者オススメ記事 > 伊那食品工業株式会社 代表取締役会長 塚越 寛

― どのような成長がいいのですか。

 前年を下回らないという歯止めさえあればいいんです。理想は、確実な低成長。私は樹木の年輪からその正しさを学びました。

 寒さや暑さ、風雪などの環境によって幅は変わりますが、樹木の年輪ができない年はなく、少しだけ成長しています。たとえば屋久杉。毎年の成長はわずかででも、1,000年、2,000年と生きているから、あれほどの巨木になるのです。私は、企業の真の価値は永続することだと考えています。そのためには屋久杉のように、年輪は小さいほうがいいんです。

― 経営者として、大切にしていることを教えてください。

 10ヵ条からなる「経営者の心得」を日々、実行し続けることです。

 これは、経営者の「あるべき姿」を確かめ続け、自分を律するためにつくった指針です。1970年頃に初めて「企業経営者心得」を書きおこし、その後、何回か改訂して2004年に「二十一世紀のあるべき経営者の心得」としてまとめました。

― 中小・ベンチャー企業の経営者にアドバイスをお願いします。

 会社のあるべき姿とは、人や社会の幸せに貢献することだというのが私の信念です。幸せになりたい気持ちはだれもがもっています。でも「より大きく、より早く」とよくばって自分に幸せをかき寄せるべきではありません。まず身近な人を先に幸せにすれば、やがて何倍にもなって自分に返ってきます。「遠きをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す」。二宮尊徳はこんな言葉も残しています。長期的視点に立ち、人に幸せを与え、みんなの幸せを最優先する。経営者としての大きな幸せはその向こうにあると思います。

■ 塚越 寛 (つかこし ひろし)

1937年、長野県生まれ。終戦の年の父の死により貧窮した家庭環境のなかで幼少期を過ごす。高校時代に結核を患い、長期療養のため東大受験を断念。3年間におよぶ闘病の後、1957年に地元の木材会社に入社。1958年に関連会社で月次赤字だった伊那食品工業株式会社に入社し、社長代行として立て直しに奔走。再建を果たす。以降、48期連続の増収増益決算を達成。1983年に同社社長に就任し、2005年から現職。著書に『いい会社をつくりましょう』(文屋)、『リストラなしの「年輪経営」』(光文社)、『幸せになる生き方、働き方』(PHP研究所)などがある。

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