― なぜそのような問題が起こってしまうのでしょうか。
理由は主に3つ考えられます。
ひとつは、睡眠は完全にプライベート領域にあり、しかも睡眠中の自分の状態は記憶できないことです。つまり、周囲も自身も気づくのが難しいということです。
ふたつ目は、社会的要因。まず、日本人の寝る間も惜しんで働くことを意に介さない風潮。徹夜という勲章があれば、会議中の居眠りには寛容になる。できる人間は睡眠を犠牲にしてこそという信仰。これらは経済成長期の負の遺産として批判の的ですが、未だに消滅していません。それどころか企業の利益追求主義のもと、大手を振ってまかり通っています。また、被雇用者側も日本人的メンタリテイーで周囲を慮り、プライベートの時間を犠牲にして、メンタルストレスをため込んでいます。
そして、最後に通勤や住宅事情といった環境も挙げられます。ちなみに県別睡眠時間の統計では、大都市通勤圏に入る自治体は最下位に位置しています。住宅事情では、家族一人一人の寝室を確保できないケースも多くあります。
― 企業経営者、組織の管理者はどのような手を打てばよいのでしょうか。
今、政府が奨励する働き方改革ですが、その改革の土台として「眠り方改革」が必要であると思っています。なぜなら睡眠は、体と脳と精神の働きを司る役割があり、日中の生活の質を大きく左右するからです。企業のメンタルチェックにしても、睡眠対策抜きでは意味がないのです。管理者は生産性向上のために、被雇用者の能力発揮や仕事の能率化に腐心していると思いますが、24時間の生活、とりわけ睡眠に関心を払う必要があります。「睡眠はプライベート領域だから、各自で対応すべし」という考えは間違いです。しつこいですが、睡眠の実態は本人が気づきにくいからこそ管理者が関心を払い注意深くチェックすることが大事なのです。
― その中で眠育普及協会様の役割を教えてください。
当協会では眠り方改革に、次のような取り組みを提案します。先ず、講演・セミナー・ワークショップによって、睡眠への「気づき」を得させ、基礎知識を学んでもらいます。更に、企業や民間組織には睡眠健康研修を行い、個々人の睡眠対策と職場からの睡眠管理を検討してもらいます。そして、眠りに関心を向けてもらうためのアプローチとして、睡眠文化体験も実施します。
― 具体的な事例を教えてください。
とある上場企業が働き方改革の一環として、睡眠の知識を得たいという主旨で講演を依頼されました。対象は管理者・被雇用者で、睡眠の基礎知識と対策を伝えました。その後、睡眠と24時間の生活に関するチェックシートを記入してもらい、後日、個々人に回答しました。返答で、最も問題だったのは、睡眠時無呼吸症候群が多数存在したことで、睡眠研究者がはじき出した日本の推定罹患者の割合とほぼ一致したことが大きな収穫でした。各自がシートのアドバイスに従って改善の過程にあります。
学校・自治体の例では保健教育の一環として、講演・セミナーの依頼に応えています。学生からは、講演後に感想と質問を提出してもらい、回答しました。感想では、睡眠とは何かを初めて知ったというものが圧倒的に多く、睡眠教育の不十分さが見て取れました。個々人の取り組みは養護教諭から聞き取ってもらっています。また、教師との検討会も実施しています。自治体に対しては、高齢者対象や介護関係の睡眠対策にも協力しています。
プロフィール
- お名前橋爪あき
- お名前(ふりがな)はしづめ あき
- 平均睡眠時間8時間
- 平均起床時間8時
- 趣味音楽、旅行、書き物、路上観察
- 家族夫、娘二人
- 座右の銘悠々として急げ
- 尊敬する歴史上の人物福沢諭吉、マリア・テレジア
- 過去に戻れるならいつ?20代
- 休日の過ごし方のんびり好きなことをする
- 好きな漢字一文字翔
- 出身校慶応義塾大学