― レインツリーで、ガーデニングの作業を通じて変わっていった利用者の例があれば教えてください。

　ガーデニング療法によってうつ病と統合失調症が改善し、利用者から職員になった人が2名います。今では当所の指導員として元気に活躍してくれていますよ。

　うつ病などの治療は、以前はとにかく「薬と休養」と言われていましたが、今は「運動と栄養」が重要と変わってきています。その2人も、当初は週に2～3日程度、半日くらい作業所に居られればいいほうで、それ以外の日は朝も起きられないような状態でした。

　ところが当所に1年半くらい通った結果、症状は改善されてすっかり良くなったのです。本人たちは「ガーデニング作業の効果」と話してくれています。もちろんその2人にそれが向いていた面はあると思いますが、外で陽をあびながら緑に囲まれて仕事をすることは、やはり心と身体にとても良い効果があると感じます。

― 古里社長は障がい者支援に携わる当事者として、日本の企業社会の現状についてどのように感じていますか。

　「障がい者は社会の鏡である」という言葉があります。障がい者が生き生きと暮らしているかどうか。その姿を見れば、国がどういう社会であるか分かるという意味です。
たとえば最近では、大手企業が特例子会社の制度を使って、障がい者を採用するための子会社を作っている例もあります。国から雇用を促され、それを実現しているようには見えても、結局は彼らを特定の場所に集めてしまって一般の従業員とは一線を画している現状があるのです。働く障がい者が増えて良いように見えても、本質的には何も変わっていないと感じることは多いですね。

　障がい者に優しい会社が増えれば、社会も変わるし国も変わると思っています。なかなかそうならないのは、相変わらず多くの人が障がい者に接する機会がないために誤解や偏見を持ってしまっているからだと思います。

― 今後のビジョンを教えてください。

　障がい者が生き生きと暮らしていける社会はきっと健常者にとっても暮らしやすい社会だと思うのです。そういう寛容な社会になってほしいと思っています。その実現に向けた役割を少しでも担っていきたいと考えています。

　現実には、こうした福祉サービスを利用している障がい者はまだまだ少ないのです。外に出ずに自宅に引きこもっていることも多い。それを良い方向にもっていくためには、障がい者支援の業界が広く社会に認知され必要とされなければなりません。そのために積極的に情報を発信していきます。たとえば、障がい者の就労がクローズアップされますが、現実にはその障がいゆえに働きたくても働けない方が多くいます。そうした方々がやりがいを持って働ける場所が必要なのです。「作業所」はそうした方たちのセーフティーネットの一つでもあるのです。

　わが社は今後、事業所を増やし、ガーデニングのお客様も増やし、これまで障がい者と関わりのなかった人たちもたくさん雇用するなどして、障がい者と社会との接点を増やしていきたいと考えています。