― なぜ、ニッチリッチが業界で頼りにされるのでしょう。

　ホステルの増加と並行して、最近は運営受託やコンサルティング事業を名乗る会社が増えてきました。しかし私にいわせれば、「ホンモノ」はごくわずかだと思っています。私はカナダ・バンクーバーでの和食店のスタッフを皮切りに、六本木のビジネスホテルなどでホテルマンとしての実績を積み、責任者として運営全般をまかされた後に、大前研一氏のビジネススクールで本格的に経営について学びました。そしてなにより、机上の空論ではなく、自ら海外を渡り歩くなかで、どのようなホステルが好まれるかを経験のなかから学んできました。

　これまでアジア圏や欧米圏などの世界中のホステルに自ら泊まり、スタッフにインタビューしながら肌感覚でえた雰囲気をもち帰って、自分が手がけるホステルの企画・運営に活かしてきました。また、インバウンドやホステル、訪日旅行者などのワードが話題になっていない16年前から訪日旅行者の取り込みを始めていて、リーマンショックやSARSなどの流行などによる市場への影響や、東日本大震災も経験し乗り越えてきました。そして今、実際に多くのホステルの運営を手がけるなかで、毎日何百名もの顧客をこの目で見ながら、業界の動向や外国人のトレンドを正確につかみ、どう活かすべきかを実践的なノウハウとして蓄積しています。

　私からしてみれば、なぜ実際にホステルの運営をしていない人がコンサルティングできるのか不思議で仕方ありません。また、日本人の感覚でつくられた国内のホステルにいくら泊まっても、それが最善のケーススタディーとは限らないのです。見聞ではなく経験によって培われた現場のノウハウを提供できる点で、他社とは全く異なると自負しています。

― ホステル運営のやりがいはどこにあるのですか。

　私にとっては、顧客に喜んでもらうことが最大のモチベーションです。旅先でお客さまに満足してもらい、「また来たい」と思ってもらう。そうすると旅自体が楽しいものになります。

　それは、なにもおしゃれなレイアウトや豪華なしつらえを施すことだけではありません。大切なのはスタッフ一人ひとりの気持ちであり、おもてなしの心や立ち居振る舞い。それをもってもらうための人材教育にも、これからも力を入れていきたいです。戦略はすぐに変えられますが、人はなかなか変えられません。スタッフのモチベーションを上げて人材教育を施し、現場のマインドを変えていくことが強いホステルをつくります。それによって、収益は必ず変わっていくのです。

― 今後のビジョンを教えてください。

　今後は国内でのホステル支援はもとより、海外のホステルでの運用受託も新たに手がけていきたいと考えています。

　その一方で、外国人就労者支援もすすめていく予定です。自国で環境に恵まれない状況にありながら、モチベーションを高くもって日本に来て懸命にがんばっている人がたくさんいます。優秀な外国人に日本のホステルで働く場を提供して、彼ら、彼女らのやる気に応えたいと思っています。

　またLGBTの方々などの採用も積極的に行っていきます。私がホステル事業を手がけるのは、多くの人に楽しい旅をしてもらいたい、快適な旅の手助けになれる場を提供したいという想いが強くあるからです。そしてもうひとつ、ホステルという場を使って人材育成のお手伝いをし、スタッフに成長へのチャンスをつかんでもらいたいという願いがあります。今後はこのふたつの想いを、より一層突き詰めていきたいですね。