― これまでの葬儀のなかで、印象に残っているエピソードを教えてください。

　ある大物歌手の父親が亡くなり、司会を任されたときのことです。密葬で参列者は20～30人くらい。いよいよ火葬場に故人を送り出すというとき、喪主である歌手が急に「歌いたくなった」とギターを取り出しました。そこで幼いときに、父親と一緒に歌ったという童謡を熱唱し始めたのです。その場にいた家族の方をはじめ、参列者のみなさんはその歌に聴き入り、涙ぐむ人もいました。しかし葬儀では火葬場での順番などがあり、時間に遅れてはいけません。ただ私は長年の経験を生かして、「予想外のことが起きる可能性もある」と思い、葬儀での進行を少し早めに行っていました。そのため、最期のお見送りも心おきなく時間をかけて行っていただくことができました。急いでいるからと言って、「急いでください」というわけにはいかないのが葬儀です。私たちのように長年積み重ねてきた経験があるからこそ、こういうシーンでも慌てることなく機転をきかせられるのです。

― 葬儀業界の今と、これからのニーズはどうなると考えられますか。

　今までは、人が亡くなると葬儀社へ電話して葬儀をするのが一般的な流れでした。しかし、その流れは大きく変わりつつあります。インターネットが普及し、喪主の方などのご家族がインターネットで葬儀社を選ぶようになりました。さらには、葬儀費用のオープン化にともなう価格競争や葬儀規模の縮小などにより、1兆円超と言われている業界市場規模は横ばい状態です。大手企業も含め、異業種からの新規参入も増えています。一方、消費者側のニーズとしては、「生前葬儀を行いたい」、「故人にあった葬儀を行いたい」など、ニーズは多様化しています。そのため、今後はさらに一人ひとりの要望に合ったオリジナルの葬儀を提供することが求められると思います。

― 最後に御社の今後の展望をお聞かせください。

　現在、葬儀社を選ぶときには、金額で決めることがまだまだ主流ですが、金額では測れない価値が葬儀にはあると思っています。私たちが、その人それぞれに合った葬儀を提供し、お客さまが本当にしたい葬儀を行える業界に変えていきたいと考えています。そのためにも、多様化するニーズにより応えられる体制を整え、消費者からの声をサービスに反映させ、「心に残る葬儀」を一人でも多くの人に残すべく、「総合葬儀プロデュース」会社として、新たなフィールドの開拓を目指します。