― エグゼクティブ・コーチの資格をもつ人がほかにもいるわけですね。そのなかで海東さんの強みはなんでしょう。

　私自身が経営者であることですね。経営者の悩みや課題がよくわかる。だから、より核心をつく質問ができ、より本質的な解決策に導くことができます。

　個人でコーチング事業を展開しているエグゼクティブ・コーチも多い。会社化していれば、肩書きは〝社長〟です。でも、本格的な社長業をしている人はあまりいない。社員を雇い、経営理念やビジョンを作成し、事業を遂行する、といったことです。

　その点、私はエグゼクティブ・コーチングのほかにも事業を手がけています。オーシャンイーストの売上の7割は、コーチング以外の事業で占めているのです。

― どんな事業を展開しているのですか。

　いま、いちばん力を入れているのはWebサイトの運営です。子育て中の母親向けサイト「ライシアム・プランタ」で、子育てに役立つ情報を提供しています。私たちが中立的な立場から情報を厳選。企業の知名度に頼らない、本当に子育てに役立つ商品やサービスを選択できるのです。

　がんばっているお母さんたちを少しでも応援したいと、2012年10月にスタートしました。月間PVなどは他と比較して誇れるほどではないですが、コアなファンの方々に支えられて、順調に伸びています。

― 子育て中の母親支援に力を入れている理由を聞かせてください。

　次世代へ「より良きもの」を渡そうとしている人を応援したい、という会社理念があるからです。

　私はもともと起業を志向していました。まだ大学に在学中だった2002年、Webサイトのデザインを手がける会社を起業。初年度に年間売上が1,000万円を超えるほど業績は好調でした。

　でも、さらに会社を大きくするには、大きな組織のなかで働いて経験を積まなければいけないと思ったんです。そこで2005年、IT企業に就職。4年後には、10名ほどのメンバーを率いるプロジェクトマネージャーに就任するまでに。

　ところが、その矢先、父が急逝。経営していた不動産会社は、翌月に大きな契約をまとめることになっていて、どうしても社長を空席にするわけにいかないという状況。選択の余地はありませんでした。私は後継者として代表に就任しました。2008年8月のことです。

　ゆくゆくは自分の思う通りの会社をいちから立ち上げよう。そう志し、修行のつもりでサラリーマン勤めをしていた。そんな私が突然、父の会社を継ぐことになり、戸惑いを感じました。もっと生前から父とコミュニケーションをとり、会社を継ぐ可能性も念頭においていたらよかった。そんなふうに悔やみました。私のような思いを、他人にしてほしくない。そんな想いから、次の世代のことを本気で考える人をサポートするというビジョンにたどり着いたのです。