― 後継者としての不安をどうやって解消したのですか。

　じつは、コーチングによって救われたのです。二代目社長としてうまくやっていくにはどうしたらいいか。なにかヒントはないか。わらにもすがる思いで、ある講演会に出席したんです。そこで日本のコーチングの第一人者、伊藤守氏（コーチ・エィ 会長）の話を聞いた。それがコーチングとの出会いでした。

　コーチングを受ければ自分の不安は解消されるだろう。そう直感し、伊藤氏に手紙を書いたんです。一部上場企業のトップをコーチする人に対して、思えば無謀なことをしたと思います。しかし、私の熱意が通じたのか、コーチングをしてもらえることになったのです。

　結果、2年間にわたって伊藤氏のコーチングを受け、不安は消えました。そして、さまざまな経営課題を乗り越えることができたんです。これほどすばらしいものを、ほかの経営者にも伝えたい。そう思うようになり、私もコーチの訓練を受け、コーチング事業をはじめたというわけです。

― では、今後のビジョンを教えてください。

　コーチング事業を拡大していきます。来期中にはいまの2.5倍の規模にまで成長させる計画です。

　とくに、事業承継に関する相談に乗りたい。次世代へのよりよい継承をサポートするという当社のビジョンにかなうからです。

　将来は、コーチの育成も手がけたい。日本にもっともっとコーチングを根づかせたいからです。米国では、GEの元CEO、ジャック・ウェルチをはじめ多くの著名経営者がコーチングを受けています。

　でも日本では「コーチ」と聞くとスポーツにおける鬼コーチが連想されるのか、精神論をふりかざすイメージをもつ人もいる。そんな誤解をとき、コーチングを文化として日本に根づかせるのも私の仕事のひとつです。