1982年、IT黎明期から続くITカンパニー

― はじめに、事業内容を教えてください。

　大きく2つあり、1つはクライアント先に常駐してシステム支援を行うシステムエンジニアリングサービスです。日立ソフトエンジニアリング(現：日立ソリューションズ)とのお付き合いが始まったのが1980年代後半。今は日立製作所とも取引があり、大規模システムの技術支援を行っています。もう1つはWEBサイトやアプリなどの受託開発です。クライアントは大手企業から中小企業までさまざまですが、会社のある八王子の企業との取引が多くなっています。

― システムエンジニアリングと受託開発。それぞれの特徴、強みはなんでしょうか。

　システムエンジニアリングに関しては、長年、大手メーカーのシステム開発に携わってきた経験が強み。特に金融システムの設計開発・品質評価、基幹システムの運用・保守、組込みソフトウエアの開発など、IT黎明期から最前線で蓄積してきた経験、知見は会社の貴重な資産であり、誇れる部分だと思っています。創業からずっとシステムエンジニアリングが業務の核でしたが、社長に就任してから全体を俯瞰すると、偏りが激しいとも感じました。一人ひとりのエンジニアの評価は高かったのですが、このままでは派遣会社と変わらないのではないか。自分たちで設計から開発まで手がけ、お客さまから直接「ありがとう」「助かった」と言ってもらえる仕事をしたい。そう考え、10年ほど前から受託開発を始めました。ここに関しては約8割が地元八王子の企業との取引です。

八王子に根差したIT企業になるという決断

― 八王子の企業との関係を強化した理由を聞かせてください。

　創業者である父親が体調不良のために経営を退くことになり、なんの準備もしていなかった私が急遽、後継社長になりました。ITとは無縁の業界で働き、出産後は専業主婦となっていた当時の私には右も左もわからない世界。それでも、社員一人ひとりの話を聞き、税理士などにも相談しながら、少しずつ会社の置かれている状況がつかめるようになります。最初に感じたのは、前述したように、常駐のシステム支援に業務ポートフォリオが偏り過ぎていること。安定はしていますが、会社を成長させていく場合、もう1つの核になる事業が必要なのは明らかでした。システム支援で培ってきた経験とノウハウを活かして、受託開発をやっていこう。そこまではスムーズでしたが、実現させるのは大変でしたね。

― 事業が軌道に乗るきっかけがあったのですか。

　会社に実績はあっても、当時の私はITに関してまったくのシロウト。営業に行ったとしてもなかなか受注には至りませんでした。そんなとき、会社が以前からサイバーシルクロード八王子(市、商工会議所、企業、大学と住民が一体となり、産業都市八王子の形成に向けて設立された組織)の会員だったことを知ります。そこで八王子の産官学の関係者とふれあい、「八王子IT協同組合」、企業継承者を育成する「はちおうじ未来塾」にも参加して、ITをはじめいろんな業種業態の経営者との接点が生まれました。そこから少しずつ仕事の受注につながる関係に発展していった、という流れです。いきなり全国だ、世界だと風呂敷を広げるのではなく、地元にしっかり根付いた会社になり、地元の皆様に愛される会社になり、そこから着実にステップアップしていきたいと思っています。