※下記はベンチャー通信32号(2008年5月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
【インタビュー後編】見栄を張る経営者はダメ
― 篠原さんが考える“壁”を乗り越えられる経営者、乗り越えられない経営者の「差」を教えてください。
本質を見抜けるかどうかだと思います。表面的に格好つけたり、見栄を張ってはダメです。素直な心を持って、謙虚にいられるかどうか。そこが差だと思います。そして、何よりも仕事に対して熱心なこと。素直な心で、熱心に一生懸命やっていれば必ず“壁”は乗り越えられます。
私も以前に、あと一歩のところで経営判断を大きく間違えるということがありました。50億円もする自社ビル購入の話が進んでいたんです。平成バブルの頃の話です。不動産価格が天井知らずで高騰していました。当社の男性役員から「不動産価格が年間30%の勢いで値上がりしているので、当社も自社ビルを購入しましょう。今がチャンスです」と説得されて、私もその気になってしまった。
しかし、当社のビジネスの基本は支店展開です。全国に支店を展開して、その地域の企業と人をつなぐビジネスです。豪華な自社ビルを1箇所に建てるのは、当社のビジネスの本質に合っていない。私は夜も眠れなくなってしまいました。これは長年、資金繰りで苦労して身に付けた金銭感覚だと思っています。そして、自社ビル購入は間違っていると確信しました。
私は契約の前日に不動産会社に一人で断りに行きました。もう先方はカンカン。2時間くらい叱られ続けましたが、私の意思は変わりませんでした。しかし、この時の判断は間違っていませんでした。その後、不動産バブルは崩壊し、多くの企業がその後遺症に悩まされることになりました。おかげさまで当社は特に後遺症もなく、その後も順調に成長を続けることができました。
当時、私が豪華な自社ビルに憧れていたら、いまのテンプスタッフはなかったかもしれません。私自身に見栄を張りたいという気持ちがなかったから、間違った判断を回避できたのだと思います。謙虚で素直、これは経営者において一番大事な要素かもしれません。私は今でも、そう自分に言い聞かせています。
― 最後に起業を目指す若者にメッセージを下さい。
まずは高い志を持つことです。自分が世の中にどんな価値を提供したいのか。そこを徹底的に考えてください。決して利己的な考えで起業してはいけません。
またいったん会社を始めたら、絶対に途中であきらめないことです。逆境に負けない強い心を持ってください。やり抜くんだという強い気持ちが大事です。そして、たとえ失敗しても、その失敗は自分の経験となっています。失敗は成功の母です。失敗の中に成功へのヒントが隠されています。だから失敗をおそれずに、勇気を持ってチャレンジすればいいと思います。
あと、仲間を大切にすることです。社長になったからといって、決して威張ってはいけません。ビジネスというのは仲間の協力を得ながらするものです。仲間あってこそのビジネスです。社長になると自分が偉くなったと勘違いする人がいますが、それは間違っています。社員が会社に集まるのは、意義のある事業を成し遂げるために集まっているのであって、社長のために集まっているのではありません。そこを履き違えずに、事業の本質を考えながら地道に頑張ってください。
■ 篠原 欣子 (しのはら よしこ)
1934年、神奈川県生まれ。商業高校を卒業後、53年に三菱重工業株式会社に入社、57年に同社を退社し、家事手伝いを経て66年にスイス・イギリスに4年間留学する。一時帰国後、71年にオーストラリアの市場調査会社ピーエーエスエー社に社長秘書として入社。73年に同社を退社。帰国後、オーストラリア就業時に知った人材派遣業からヒントを得て人材派遣会社のテンプスタッフ株式会社を設立し、代表取締役に就任。2006年、同社は東証一部に上場を果たす。
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プロフィール
- お名前篠原 欣子
- お名前(ふりがな)しのはら よしこ
- 出身神奈川県
- 平均睡眠時間6時間
- 平均起床時間6時00分
- 趣味ウォーキング
- おススメ本松下幸之助の書籍全般
- 購読雑誌5冊/月
- 今までに訪れた国20ヵ国
- 座右の銘置かれた環境で一生懸命。 必ず光は見えてくる
- 尊敬する人母親、松下幸之助、マザーテレサ
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- 嫌いな食べ物なし
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