― 自動車ディーラーは競合が多いと思います。その中で好業績を続けるビジョナグループの強みを教えてください。
なによりも人材育成に力を入れてきた点でしょう。人事ほど経営において大切で、しかも難しい仕事はないと思っています。言い古された言葉ですが、やはり「企業は人なり」なんですよ。
私たちはエリアごとに店舗を置く、拠点が分散しているビジネスモデルですから、社員それぞれのベクトルをどう合わせるか、どうやって意思疎通を図り、想いを共有していくかが重要になってきます。そのために、なにかあったとき、つねにそこに立ち戻ることができる理念を明確にすることと、理念やノウハウの浸透や伝承が、きちんとなされるための仕組みづくりに注力しました。
つまり、会社としてのセールスに対する意識やテクニックについて明文化し、経営理念を定め、社員間のベクトルを合わせていく。経営理念、ビジョンやスピリット、行動指針を明確にして共有しながら、浸透を図っていきました。
― どんな成果がありましたか。
特に若手社員が大きく成長してくれましたね。経営理念や経営ノウハウを7割ぐらいマスターできたと判断した若手にはチャンスを与え、店舗運営をまかせるようにしていきました。「立場が人をつくる」というように、失敗をおそれずに勇気をもって実践していくことで、生きた経営を実地で学ぶことができ、自己成長に直結します。若いうちからそれを経験させると成長は圧倒的に加速します。
ただ経営理念をおぼえるだけでは意味がありません。仕事において、自身の意思決定の基軸となり、行動できてこそ理念が浸透していると言えます。日々、自問自答し、より深い学びと見識を養うことが大切なのです。
やらなければならないこと、やるべきことをやり抜くことで、できることが増え、それが自信につながり、本当の意味でやりたいことも見えてきます。そう、人生が拓けます。主体性をもって仕事をし、そしてどんな仕事にもやりがいを自ら見出し、創意工夫を欠かさない。仕事は必ず相手があるものですが、その相手の期待値を知り、それを超えていくことでこそ、驚きと感動が生まれるんですよ。
― 若手が経営に関心をもつようにする工夫はありますか。
会社の方向性や方針をすべて社員にディスクローズしています。「新入社員だから知らなくていい」というような区別はありません。経営についてのすべての情報は、包み隠さず全社員に開示しています。
経営計画、財務内容、人事採用計画などを、細かな数値レベルまで全社員が共有し、経営者意識をもつことで、一人ひとりの役割が明確になります。おのずと目標達成への意識が高まり、多くの若手社員の躍進の原動力になっています。
プロフィール
- お名前鷲尾 潤二
- お名前(ふりがな)わしお じゅんじ