― 全国の学校の部活動に広めるために、力を入れていることはありますか。

　力を入れているポイントは2つあります。1つ目はプログラム開発です。学校の部活動に広くアスリートサポートシステムを採り入れてもらうには、限られた予算でも導入が可能になることが大切です。そのためには、頻度を選択できるということも重要で、例えば週1回のサポートでもトレーニングやリハビリがきちんと伝えられるプログラム開発が必要です。またそうした観点からでも最大限効果が上がるプログラムを作ろうと常に努力しています。すでに結果も出てきていますので、いろいろな学校からの引き合いが一気に増えてきました。また、もっと地方の学校にも広げていくために、更に少ない頻度でもサポートできるようプログラム開発を工夫しています。トレーニング映像を渡すことでわかりやすくしたり、データ管理システムを作り、共有したり、そのような工夫から今では月1回の訪問サポートを多くのチームで実施してもらえるようになりました。

　2つ目は、同時にフィールドテストという体力テストを展開している点です。この事業は広く全国のアスリートの体力を測定し、横断的にも縦断的にもフィジカル能力を数値化して評価していこうという取り組みの一つです。このテストを通して体力について正しい見方ができるようになり、結果フィジカルトレーニングの必要性を認識してもらえるという効果もあります。テストは測定が約1時間、その後全データを分析し評価表を渡すまでに40分。それもいつも練習している環境でできるということから、非常に多くのチームで実施してもらえるようになりました。

― 具体的にどのようなテストを行うのですか。

　サッカーの場合、10ｍ・30ｍのラップタイムも同時に計れる50ｍ走、ステップワークの50m走、切り返し動作が含まれる50m走、ハードル走、垂直跳び、5段跳び、マルチステージ・シャトルラン、ロングキックといった種目を行います。これらを定期的に測定すると、自身の体力向上の度合いはもちろんですが、チーム内、全国のトップレベルなどいろいろなデータと比較できることから、生徒が楽しみながら実施でき、広がってきたのだと思います。

― 多くの学校を指導するとトレーニングスタッフの質も問われます。人材採用や教育はどのように行っていますか。

　採用時はコミュニケーション力を重視しています。この仕事は選手と指導者に加え、保護者やドクターとも関わります。それらの人にきちんと情報を伝え、こちらの意図を理解してもらうには高いコミュニケーション力が必要です。

　教育については、定期的に指導のロールプレイングを行っています。たとえば、「フィジカル」の指導では、まず試合中の動きをビデオで確認しながら、どの動きに問題があり、どの動きが良いのかといった指導するための眼を養っていきます。その後、その現象が起きやすいメニューをトレーナー役と選手役に分かれて実践しあい、指導力を高めていきます。他には、正確なプログラムを作り出していくという力も必要ですから、トレーニングやリハビリのプログラムを各自に作らせ、私が添削するといった勉強も行っています。

― 今後、特に力を入れたいポイントはありますか。

　今まではサッカーが多かったので、これからは他競技にアスリートサポートシステムを広く伝える活動に力を入れていきたいと思っています。これからはそれぞれの競技に合ったフィジカルトレーニングやリハビリテーションのプログラム作り、DVD製作などを行っていくつもりです。

　他では新たに公共の体育館、病院などと提携し、「スポット・トレーナー・サービス」を展開していこうと思っています。このサービスはそういった施設内で個人的なトレーニングやリハビリメニューを定期的に作成し、指導するものです。まもなく青森県立中央病院で週1回、「スポーツ外来」という形で始まる予定となっています。今後も積極的にこのような事業を広げていきたいと思っています。